ちょっとしたきっかけで、最近一般向けにも昇降デスクやスタンディングデスク(以下、まとめて「昇降デスク」)の販売を始めたダイシン工業株式会社(@DAISHIN1959)のTwitterアカウントをフォローするようになりました。自社の情報の発信だけでなく、デスク周り、特に最近昇降デスクに興味を持ち始めた方、実際に買われた方のツイートをRTされているので、自然とこれらの情報が目に留まるようになってきました。
ちなみに私は昇降デスクを3年ほど前から(スタンディングデスク自体はもう少し前から)使っています。今も愛用していますし、実際に気に入っています。ただ、3年間使ってきて、私が誤解していた点、また使い始めたおかげで気づけた点なども色々出てきました。
色々な方のツイートを目にしていると、私が使い始めた頃と同じようなイメージを持たれている方もいますし、「いまいちよくわからない」「実際に買おうか迷っている」と購入を迷われている方も結構いるようです。
そこで私なりの、この3年間使ってきての印象と、気づいた点の中から、今回は身体、健康に関することを2つ挙げてみようと思います。
昇降デスク、立って作業をすることと健康についての、意外と誤解しやすい2つの点。
スタンディングデスク(昇降するものではなく、単純な立ち机)は5年ほど前から日本でも一部で話題になっていました。座り続けることの弊害と立って仕事をすることのメリット、のような形で言われていたのですが、国内では当時そこまで盛り上がった印象はありませんでした。実際、会社で導入するとなれば色々コストもかかりますし、かといってそこまで家庭で需要があるかというと難しい、というのがあると思います。実際そこまで個人向けの品揃えも多くはなかった気がします。
当時は今のように電動で昇降できるデスク自体少なかったですし、あったとしてもニッチな市場だったと思うのです。日本だと部屋の事情もあって、ただでさえ専用のPCデスク自体用意するのが難しいのに、更に立つ専用の机なんて市場が出来るほどのニーズにはならなかったのだと思います。
それが、このご時世で一気に増えてきました。とともに、従来の単純なスタンディングデスクだけでなく、一台で立っても座っても作業が出来る、昇降式のデスク(手動から電動まで)のラインナップも増えてきました。
ということで、冒頭でも触れたように、最近興味を持つ方も増えてきた気がしています。
ただ、まだそこまで実際に使っている人も多くはないですし、情報も少ないので、眺めていて「意外と誤解しやすいかな」と感じる点もありました。
そこで今回はネット上でも結構見かけることの多い、「昇降式のデスクの健康に対するイメージ」を2つ挙げてみようと思います。
もちろん書いたことに対しての責任を放棄するつもりはありませんが、その点はご理解の上、読み進めて頂けると嬉しいです。
誤解しやすい部分(1)昇降デスクにすれば腰痛が無くなる。
人によります。むしろ違った腰痛として出る場合もあります。
私の場合は、ダイレクトに腰にくることが増えました。
要は姿勢の問題なんですね。私の場合、立っている時の姿勢が悪いんです。
立つとか座るって、別に学校で教わらなくても自然に出来るようになるので意識することってありませんが、かなり重要だな、と思ってます。むしろ教わらないから、自己流になってしまう。これが立っての作業に向かない場合もあるんですね。
私の場合、20代はずっと店員をしていたので、ほぼ一日立ち仕事でした。この時って「店員として正しい(見栄えが良い)」姿勢は意識しても、「身体に良い(負担の少ない)」姿勢と必ずしも一致するとは限りません。
私、そこそこ身長もあるので、猫背になりやすいんです。更に店員って両手を前で合わせた立ち姿勢をとることが多いので、ますます肩が前肩、巻き気味になりやすく、気を抜くと貧相に見えやすくなるんです。そんなこともあって、鏡を見ては猫背にならないように、ばかりを意識した結果、どうなったかというと、「過度に腰を反らすようになった」んです。
その姿勢が癖になってしまっているので、立っていると無意識に腰に力が入ってしまうんです。なので、私は長時間どころか、短時間でも立っていると、無意識に腰を反らせてしまうので、結構腰にくる身体になっておりました。
ここ10年ほどデスクワークが増えたことで、座った時の姿勢、座り方にはだいぶ意識するようになりましたし、椅子も変えました。ただ、立った時の姿勢はまったく気にしていなかったので、昔の悪いクセが出てしまって、立っていると却って腰に辛い。
ちなみに、20代の10年間の立ち仕事と、30代の10年間の座り仕事をしてきて気がついたのは、
「立ち仕事」と「座り仕事」では同じ腰痛でも種類が違う(痛みの出る部分、原因が違う)
ということです。使ってる筋肉も違いますし、身体に良くない姿勢のまま続ければ、当然不具合も出てきます。なので、個人的な感想としては、
昇降デスクにすれば腰痛が無くなる、とは限らない。
ということです。むしろ立つことに慣れてないと、足だけでなく腰も辛いと思います。
昇降デスクの購入を検討されている方の多くは、立つことには座ることほどには慣れてはいないのではないか、と思います。ということは、立ち慣れていない人が我流で長時間立ち続ければ、むしろ違った形で腰痛や身体の不調が出てくる可能性もあります。
それが、昇降デスクを購入して、立つことが増えてからは、同じ腰でももう少し上の方、一般的に腰、と言われている辺りに直接くるような、分かりやすい痛みが増えました。
腰痛の人って太もも裏が張ることも多いのですが、以前は座り続けて椅子に圧迫されて血流が滞った感じの張りだったのが、今は立ち続けて、太ももに力が入っていることでの張りが時々あります(この張った感じ、立ち仕事をし始めた方だと働き始めの頃に経験されることが多いのではないか、と思います)。
誤解しやすい部分(2)座るのが良くない。立ったほうが良い。
座っていようが、立っていようが、「同じ姿勢を長時間し続ければ」どちらも良くないと思います。
これ、私が昇降デスクに興味を持ち始めた5年近く前、ちょうど話題になり始めた頃にも言われていたことです。Googleがスタンディングデスクを採用した、とか一気に記事が出始めまして、座ることの弊害が盛んに言われてたんですね。座って仕事をしている人と、立って仕事をしている人では寿命がこんなに違う、みたいな。
ただ、確か当時もその後に「座るか立つか、と寿命には直接の明確な因果関係は見られなかった」みたいな研究結果もありました。
確かに座ると色々な弊害はあります。血流が滞るとか、調べれば色々出てくるとは思います。一時飛行機のエコノミー症候群と重ね合わせて座ることの弊害にしていた記事も見かけました。
ただ、考えてみると、要は「〇〇し過ぎ」「長時間〇〇し続ける」ことが良くない、というだけだと思うんです。姿勢に限らず、食事でも運動でも、何でもそうですよね?
座っていようが立っていようが、途中でストレッチも動きもせず、結局同じ姿勢をし続ければ、どっちだって身体には悪いんです。ただ、長時間立ち続けるのは人間慣れてないし辛いので、結果として同じ姿勢になりにくい、ということはあるかもしれません。また、最近はデスクワークの時間も多く、座り続けている人が多いので、立つことが良い効果を生むことはあると思います。
なので、ここ最近使い始めた人を眺めていても「今日は一日立ってPCでの仕事をした!座るのは良くない!かなり疲れた!」といった感じの感想を時々見かけます。何かのトレーニングみたいな爽快感と疲労感を感じているのだとは思うのですが、そりゃ疲れます。まして私が先程(1)で触れたように、身体に負担の少ない立ち方に慣れていなければ、却って負担は大きいと思います。
昇降デスクの良い点って、気軽に高さを(自由に)切り替えられることだと思うんです。最近はメモリー機能も付いているので、自分に最適な座ったときと立った時の高さを登録しておけます。なので、やっぱり1時間に1度くらいは意識して高さを切り替えて使うことをオススメしたいな、と思ってます。
最近はApple Watchなどでも「スタンドリマインダー」で1時間に1度は立ちましょう、少し運動しましょう、って出ますよね。あれと同じです。動かずに、同じ姿勢で、長時間作業をすれば、座っていようが立っていようが、身体には悪いと思います。
もしかしたら、あなたの不調の原因は他にあるかもしれません。
折角昇降デスクに興味をもたれたのであれば、合わせて腰以外の部分にも意識を向けて欲しいな、と思います。
例えば首。
折角昇降デスクを買っても、今まで同様に長時間ノートPCを使ってませんか?「ストレートネック(スマホ首)」になってませんか?
例えば肩。
PC作業を長時間していると、気づかない内に肩が丸まった姿勢になりがちです。「巻き肩」の状態です。
例えば姿勢。
自分の座ってる姿勢、立っている姿勢、それぞれの「意識している時」と「無意識の時」を知っていますか?
腰痛の原因って単純に腰やお尻、座り方だけにあるのではないな、と感じています。実際、身体ってすべて繋がっていて、それぞれに補い合っているので、腰痛の原因も、人によって、実は足がパンパンに張っていることにあったり、背中や肩に原因がある場合もあります。
私も40歳を過ぎて、突然頭痛に日々悩まされるようになったのですが、これだって原因は色々あるんですね。一時期はノートPCの画面を見ることも苦痛でした。PCに限らず、机の上のノートに何かを書く、本を読む、といったことも辛かったのです。なので、私は当時単純にストレートネックだと思っていました。でも実際は受診したものの、ストレートネックにはまだなっていませんでした。ただ、結果分かったことが色々ありました。
身体ってそんな単純な話じゃないんですね。首だけ対策をすれば良い、という話じゃないんです。結局、首をやられている、ということは、肩周りも固まっていたり、背中も張っていたり。その結果、肩や背中、姿勢で支えきれずに、首に負担がいきやすくなってしまっている。姿勢も大切。結局すべて繋がってるんです。そして、これはあくまで「私の場合」に過ぎません。人によって頭痛の原因は違います。
もしかしたらあなたの不調の原因は、もちろん座りすぎにも原因はあるとしても、実はノートPCで長時間作業をし続けていて、無理な姿勢をし続けていることかもしれません。画面を見ようとして、無意識に姿勢が悪くなってしまっている可能性もあります。座り方が悪ければ、それだけ腰にもきます。それだと、単純に昇降デスクを導入したからといって解決する問題ではなく、もしかしたら1~2万円くらいの外部液晶モニターを合わせて導入することで緩和する可能性もあります。
今回、昇降デスクに興味を持った、ということは、今、何かしらそうしたきっかけがあった、ということだと思います。であれば、良い機会なので、少し立ち止まって、自分の環境を見直してみても良いのかな、と思います。
モノを変えることをきっかけに、自分の姿勢や身体に意識が向けられるようになれば良いな、と思います。
単純に私の興味関心のアンテナが昇降デスクに今向いていることもありますが、ここ最近のテレワーク、リモートワーク需要の中で作業環境も意識され始めてきているのかな、と感じています。
実際、昇降デスク一つとっても、たった1年前と比べても、かなり一般向けにも商品を展開するメーカーが増えてきたな、と思います。ラインナップも豊富になってきました。
以前はデスクワークの腰痛改善、というと、「椅子を良いものにする」といった選択肢しかありませんでした。それが、昇降デスクという選択肢が出てきたことは、とても良いことだと思っています。
ただ、個人的には、今も昔も、単に椅子や机(=モノなどの環境)だけを変えれば解決する、という話ではないと思っています。やはり自分で意識して、改善できる部分は常に改善していくことが大切だな、と思っています。
例えば、私は5年前に腰痛に悩んでいた時、「座り方」に興味を持ちました。確かに10万円超えの椅子を買えば腰や身体への負担は減るかもしれないけれど、私自身の座り方や姿勢が悪い限り、結局「その椅子に座っている時しか意味がない」のではないか、と思ったからです。であれば、どんな椅子に座る時でも、腰や身体に負担の少ない座り方が身につけば、その方が長い目で見て良いのではないか、と。結果、あの時「座り方を変えるための椅子」を買いましたが、今も愛用しています。今も気を抜くと姿勢が悪くなりますが、その椅子を使っているときだけでなく、外で電車に乗っているときや、カフェの椅子に座るときにも、座り方を意識するようになりました。
それと同じだと思うんですね。最近になって昇降デスクが注目されるようになって、「座る」だけでなく「立つ」にも意識が向けられるようになった。であれば、自分が今まで無意識に行ってきた「立ち方」「姿勢」を見直してみる良い機会ではないか、と思っています。
ということで、今回は昇降デスクを3年使ってきた私が感じた「誤解されやすい」点について、まずは身体に関係することで2つ挙げてみました。あくまで私個人の印象、考え方ではありますが、何か参考になれば嬉しいです。