先日の三交製靴への訪問の際、頭の中でストレートチップのことを考えていました。
昨日三交製靴の松田さんとお話したときに感じたのですが、(現行にはありませんが)黒のストレートチップや、このプレーントゥは冠婚葬祭(特にお葬式)に最適な靴では無いか、と。
正直なところ、私もこれであと黒のプレーントゥ(もしくは別注で過去にあった黒のストレートチップ)があれば、ほぼ全てまかなえてしまえそうなくらいです。
黒の外羽根ストレートチップだと、別注になるので25000円に消費税くらいですよ、と聞きながら、ストレートチップについて上のようなことを話していた時、ふと視線の端のほうに思わぬものが飛び込んできました。
何十年も前、三交製靴はドレスシューズも作っていた。
茶色の内羽根のストレートチップ。
三交製靴と言えば外羽根のマナスルシューズがイメージとして強く残っていただけに、非常に細く、土踏まずもしっかり抉られた美しいストレートチップが出てくるとは驚きました。
三交製靴ではマナスルシューズ以前には、人気のあったゴルフシューズや、当時はこうした細いストレートチップなどのドレスシューズも作っていたそうです。
松田さんも何十年になるのか分からないそうです。
当時のかなりの腕を持った職人さん(既に引退)が何かの折りにたまたま作ったサンプル用らしいのですが、しっかりライニングも総革、コバ周りは綺麗に矢筈になっていたり、と、単なる適当な靴ではありません。
拝見した際にはその辺りに無造作に置かれていて、埃まみれ、中はカビだらけの状態。仕方ないです。あることすら忘れられていたくらいなので。
今回事務所の中をだいぶ掃除して片付けた際に、ボロボロの靴を幾つも処分したそうですが、これはその内の一足。同じようにだいぶ汚かったのですが、かなり綺麗な形の靴で、これは勿体ないな、と思って別にしておいたそうです。
まだ誰にも履かれていない状態。捨てるには忍びないけれど、サイズも小さいので誰も履ける人がいない。けれど保管状態も悪いし(カビもだいぶ出ていた)、どうしようかと思って、、と言われるので、お願いして譲って頂くことにしました。
そして中をしっかりクリーニングしてカビ除去し、お手入れもした状態がこちらです。
中底がやっと見られるようになってみると、手縫いの跡が感触で伝わってきます。これは保管するのではなく、きちんと履いて靴としての役割を全うさせてあげたい、そう思うのですが、サイズが小さい。
クリーニング後、唯一判明したサイズは表記状上は24.5cm。ラギッドシューズで26.0cmの2Eを履いている私には足すら入りませんでした。無念。
かなり細い木型なので、もしかしたらサイズ24.0cm程度の妻の足のほうが合うかもしれません(勿論男性と女性では骨格自体が違うので、同じ24.5cmでも全く靴としては変わってきますが)。
何の縁かわが家にやってきた、何十年も前の手縫いの靴。当時の三交製靴や日本の靴を知る上で貴重なものでもありますので、きちんと伝えて行きたいと思います。
こちらは若干サイズが大きいもの。紐穴が6つなので、それだけでも表情が違います。つま先含め雰囲気も少し違います。
こちらもソールも含めて綺麗で美しいですね。これもサイズが24.5cmなので、履くことができないのが非常に残念です。