毎月コンスタントに参加しているイベントの1つが「短篇映画研究会」。私は会場が下北沢のDARWIN ROOMに移った第151回からなので、まだ7回しか参加していませんが、継続することの素晴らしさと凄さを感じます。
[0829-201506] 古民家って面白い。6.13 第151回 短篇映画研究会
[0894-201507] こんな暑い日の夜は下北沢でゾウさんの映画を見よう。19時から第152回 短篇映画研究会が開催。
これまで膨大に制作されてきた日本の文化映画・科学映画・教育映画・ニュース映画・アニメーションなど「短篇映画」は、なかなかその実態を知ることができませんでした。そこで「とりあえず何でも見てみよう」と始めた上映会が「短篇映画研究会」(旧・短篇調査団)です。2005年1月から毎月2回、2010年からは毎月1回上映しています。上映作品は主に東京都立多摩図書館(2009年3月までは旧・都立日比谷図書館)に収蔵されている16mmフィルムを利用しています。東京都の視聴覚ライブラリーに収蔵されているフィルムは約9,000本、この中から選んだフィルムを事前試写なしで当日「見てみる」形式です。
下世話な話ですが、一般人が趣味としてそれぞれの映像作品を揃えようとしたらお金が幾らあっても足りません。なぜなら、例えば今回上映された作品の1つ「筌(うけ)(1984/モロオカプロ/諸岡青人)」でプリント販売価格195,000円。「有明海の干潟漁(1989/桜映画社/大島善助)」で210,000円(消費税別)もするからです。まぁ元々一般販売されるような物ではないのですが。
そうした16㎜記録映画を探してきてテーマ毎に集めて上映する(都立多摩図書館からレンタル。商用利用は不可)主催の清水浩之(@shimizu4310)さんは凄いと思っています。
今回のテーマは「漁業いろいろ」。あまり知られていない海苔の生態(アサクサノリ(1972/学研/堤地富))や真珠を生み出す養殖作業の記録(真珠 海からの贈りもの(1983/岩波映画/湯本昌))、水路沿いに仕掛ける竹製の罠、「筌(うけ)」から、消えていく手仕事を追った「筌(うけ)」(1984/モロオカプロ/諸岡青人)までそれぞれ興味深かったのですが、何より印象的だったのが最後の作品「有明海の干潟漁」(1989/桜映画社/大島善助)でした。
「九州の宝物庫」と言われる有明海。その干潟で日々育まれてきた人々の暮らしに密着した伝統的な技法による漁。それは江戸末期からほとんど変わらず、この地域の人たちは小さい頃から干潟に慣れ親しみ、その中でそれぞれが自分にあった漁法に習熟していく。目の前の映像の中で繰り広げられるそれらの技は本当に「名人芸」「芸術」と呼ぶにふさわしい美しさと凄さでした。
ただ、食習慣の変化や経済の発展で、ここでも同様に漁法を行う人たちの高齢化が進み、少しずつ少なくなっているそうです。
干満差6メートル、日本最大の干潟を持つ有明海。そこにすむ珍魚、ムツゴロウをかぎ針に引っ掛けて釣る江戸時代からの伝統漁法「むつかけ」が沿岸部に伝わる。最盛期は昭和40年代で、佐賀県鹿島市には60人ほどのむつかけ師がいた。食習慣の変化などから今では7~8人となり、高齢化も進む。そんななか、30年ぶりの若手後継者が突如、現れた。
ムツゴロウ伝統漁守る 転身の後継者、干潟への誓い :日本経済新聞
伝統漁法「むつかけ」も出ていました。映像自体は1989年のものだったのですが、そうかぁ、30年ぶりに後継者が出来たんですね。いや、今知ってちょっと嬉しい。
こんなことでもなければわざわざ関連書籍や情報を集めようとも思わなければ、そもそもそんなことに興味すら持つことがなかった世界に気付かせてくれるのもこれらの記録映画、短篇映画研究会の魅力だと思っています。
次回は2月14日(日)19時から。「真冬の下北沢サスペンス劇場」だそうです。どんな魅力的な世界を見せてくれるのか、今から大変楽しみにしています。