ロイドフットウェアは、日本における英国靴好きにとっての聖地の一つでもあるお店です。私が最初に紳士靴について教えてもらった場所でもあり、何だかんだと偉そうにこんなところで靴について書いていても、このお店に伺うたびに緊張し、自分の未熟さと無知に恥ずかしくなり、また、改めて紳士靴が好きになります。
20代はほぼ銀座だった。
というほどお金があったわけでもなんでもなく、単に職場が銀座であり、紳士靴もスーツも時計も、みんな銀座のお店で教わり、馴染みの喫茶店で色々な方とお会いし、お話を伺うことが出来、可愛がっていただいた街だった、というだけです。
仕事の仕方自体は甘々だったと思いますし、決して褒められたような良い仕事が出来たとは言えませんが、自分なりにそれなりに一生懸命だったとは思います。
そんな中、ある時、同僚二人からサプライズで贈られたのが、このロイドフットウェアの革の靴べらです。
今も毎日持ち歩いているこの靴べらですが、これを贈ってくれた同僚の内の一人は、私の未熟さと青さから、追い詰め、結局関係を修復出来ないまま、私の前から去ってしまいました。
今思えば、この時の自分の驕りや甘さを徹底的に叩きのめし、鼻っ柱を折ってくれた、気付かせてくれたのが、私にとっては先日も書いた、尊敬する先輩だったのかな、と思います。
先日会いに行くことが出来た先輩とは違い、彼が今、どこで何をしているのか、全く分かりません。また偶然どこかで出会えたとして、私は彼に何を話せばいいのか、未だ分からずにいます。
この靴べらを使うたびに、そんな胸が痛む、苦しい思いと、銀座での様々な日々を、思い出させてくれ、また今日も頑張らねば、と思わせてくれる原点のような物でもあります。
ちなみに、靴べらは表面は革が良いと思う。
これは単に革好きだから、というだけでなく、表面が革のほうが、靴を傷めにくいんです。以前靴の修理やクレーム、相談を受ける中で、結構あったのが、靴の中敷が抉られたように破れていたり、穴が空いているというもの。だいたい本人に覚えはないのですが、これ、靴べらの使い方に問題がある場合が多いです。靴べらを靴に突き刺すように突っ込んで、そこに体重をかけて足を入れる方が結構います。その時、中敷に急角度で靴べらが食い込んでいます。
この履き方自体が良くはないのですが、これに更に硬い鉄やプラスチックなどの靴べらを使っていると、穴が空きやすいのです。革製だと比較的当たりが柔らかいので、若干リスクが減る。そんなこともあって、革製がオススメだったりします。
追記:2014年9月20日 更新
靴べらの正しい使い方について書きました。