目黒にある東京都庭園美術館で明日6月30日まで開催中の「マスク展」に行ってきました。
フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵の膨大なコレクションの中から、今回は世界各地で使われている「マスク」に焦点を充てて約100点を展示することになった今回のコレクション展。急に「マスク」と言われても一瞬身近に感じにくい方も多いと思いますが、今日明日で時間のある方はぜひ訪れて欲しい非常に興味深いものでした。
フランス国立ケ・ブランリ美術館
こちらには私は2007年秋に訪れています。ちょうどその時はパリがストの日と重なっていまして、ルーブルその他一部入館が出来なかったり電車も走っていなかったりとなかなか楽しい時期だったのですが、その後半に訪れたこの美術館は非常に興味深く、なんて上品な言葉ではなく、要はワクワクするとんでもなく面白いところでした。
ということで、当時の写真をもしかしたら館内も含めて当然のように撮っているだろう、と探してみたら、外観すら一枚も残っておりませんでした。思い出しました。ストから戻ったルーブル美術館内を撮りまくって、しかも充電一式忘れてバッテリー切れていて全く撮れなかったという。
その割に下らないものや今となってはなぜそれをそんなに撮っている?と悲しくなるようなモノも大量に撮られていて、当時の自分を小一時間問い詰めてやりたい。
妻と二人での旅行だったのですが、妻とともにパリで改めて最も行きたい美術館の一つに挙げられる場所でもあります。
世界には膨大な量の人類の至宝ともいうべき価値ある遺産が残っている。
これは以前大英博物館か何かの特集で見たのですが、今現在世の中に公開されている世界各地の出土品や様々な美術工芸品はほんの数%にも満たないそうです。残りは保存や修復、そして研究が全く進まず(人手不足、予算不足等々)博物館の奥深くに保管されている。
例えばミケランジェロやダ・ヴィンチの残した作品は確かに世界の宝といも言える美術的価値がありますが、それに匹敵するだけの未知なる文明や未だ研究されていない文明の美術品、工芸品が山のようにあるのです。
ただ、それら眠って世に出ていないモノたちとミケランジェロの「世界での価値の」違いは、世の中の人々にとってそれが「知られていて」「誰にとってもわかる」価値として認められているかどうか、ということ(これが非常に重要なことなのですが)に過ぎないのですね。世の中に置ける価値というのは、その時代の人々が知っているかどうか、それに関心を示すかどうか、価値があると思っているかどうか、ということに過ぎないのです。
アフリカ、アジア、オセアニア、そしてアメリカ大陸に息づく、西洋文明とは異なる文明や少数民族の文化
いつの間にやらマスク展ではなく、その出元のケ・ブランリについて書き始めていますが、わかりやすいのがこの美術館が展示している「アフリカ、アジア、オセアニア、そしてアメリカ大陸に息づく、西洋文明とは異なる文明や少数民族の文化」の数々。もちろんそれにすらまだ分類されない遥かに多くの文化もあることはとりあえず置いておきます。
それらを今、まとめて感じること、出会うことの出来る美術館という点では、このケ・ブランリ美術館は非常にワクワクする場所でもあります。そこから今回は「マスク」に絞っての上陸です。
館内は当然ですが「撮影禁止」です。
撮影禁止、模写禁止は作品の保護上の問題ももちろんあるので仕方ない部分もあるのですが、それが単に商業上の理由だったり、横並び式の事情だったりすると悲しいことだな、と思うのです。この辺り、まだ日本は美術芸術の後進国なんだろうな、と思います。美術はまだまだお高いところに留まって、居住まいを正して拝見するものなのでしょうね。
西洋文明とは異なる文明や少数民族の文化」と「旧朝香宮邸」の見事なハイブリッド
私、おそらくこれらのマスクのうちのかなりの数は一度ケ・ブランリ美術館で見たことがあると思うんですよ。けれど、非常に新鮮でした。単に覚えてない、という理由ではなく(それも大きいかもしれませんが)
それは、ケ・ブランリではこれらのマスクは(当然ですが)「アフリカ、アジア、オセアニア、そしてアメリカ大陸に息づく、西洋文明とは異なる文明や少数民族の文化」の数々を展示した美術館の中に置かれているんです。
今回のマスク展では「旧朝香宮邸」の中で展示されているんですね。東京都庭園美術館ですから。
今回のポスターにさり気なく添えられているコピー。「謳え、踊れ、驚異の‘ハイブリッド’たちよ」。
これはもともとマスクというものの持つ特異性であったり、役割を非常に興味深く表しているものなのですが、
仮面を身に着けることによって、人々は自然と向き合い、神や精霊といった目には見えない存在と通じ、物語を演じる表現者となりました。仮面は、肉体と意思をもつ人間と、それを取り巻く世界の境界に位置します。人は動物や精霊や神々、そして物語の登場人物を模(かたど)った仮面を纏い、時に音楽やリズムとともに踊り、舞い、それと一体化することによって、我と仮面(=他者)という両者の力を併せ持つ存在(‘ハイブリッド’)となって、未知なる時空の扉を開こうとしたのです。
それ以前に今回マスクから受けた印象は「西洋文明とは異なる文明や少数民族の文化」と「旧朝香宮邸」の見事なハイブリッドでした。
すぐそばには自然教育園公園もあるし、天気のいい日には最高のコースです。
現在庭園は一部入れませんが、それでも十分に見て回れますし、お隣には国立科学博物館附属自然教育園もあるので、お天気の良い日のお散歩には最適のコースです。
庭園美術館内のカフェも雰囲気良いですしね。一人で寛ぐにも充分です。
私は今回のことで改めて芸術的な方向から興味を持ちましたので、館内SHOPで売っていたこちらの文庫を買ってしまいました。
今回のマスク展ではもちろん日本などアジアのマスク(面)も僅かながら展示されていますので、合わせて見てみると面白いと思います。
といっても明日までなので、興味のある方はお早めに。